あまりいい印象を持たれていないカラスたち。
住宅地では生ゴミを漁ってゴミ集積所を散らすことから、私の住む町でもカラス除けネットは必須になっています。
くちばしから尾の先まで全身真っ黒なその姿に、害鳥のイメージを持っている人は少なくないでしょう。
そんな彼らにも、新たな命を育む季節がやってきました。
この時期は巣作りに励むカラスの姿を見かけるようになります。
せっせと小枝を集めては、くちばしで器用に組み上げていく彼らの本能には本当に関心します。
最近のカラスは巣作りもたくましくて、材料にはワイヤーハンガーからプラスチックの園芸資材まで使われているそうです。
これらは巣の土台を組むのに人気の素材だそうですが、中にはどこから失敬してくるのか、車のワイパーのゴムまで使われていることがあるそうです。
さすがに車の持ち主はショックなことと、心中お察しします。
実は私の身近なところにも、巣作りの被害に遭っている方たちがいるのです。
乗馬クラブの馬たちです。
春先にクラブで見かけるカラスはよく、長い糸の束のようなものをくわえているのですが、そう、馬のたてがみです。
その調達ぶりがすさまじく、繋ぎ場に繋がれている馬の首に遠慮無くのっかり、くちばしでたてがみをくわえると、そのまま引き抜いていくのです。
馬も、生えているたてがみを抜かれるわけですから、たまったものではないはずです。
しかし不思議なもので、不快感を示してすぐさま反応する馬もいれば、中にはぼぉ~っとして(いるのかは不明ですが)、抜かれるがままの馬もいるのです。
カラスの巣は、枠組みの部分はしっかりした材料が使われ、卵が触れる部分、つまり雛たちの布団になる部分は動物の毛などが使われるそうです。
馬のたてがみや尻尾はホースヘアと呼ばれて、これで織られたバッグは高級品として大人の女性に人気ですが、馬から直に取ったフレッシュなホースヘアの巣は、生まれたての雛たちに素敵な寝心地をもたらしているのかもしれません。
被害にあった馬にとってはたまったものじゃないでしょうけれど、カラスも子どもたちのために必死。
馬は繋がれているので不利な立場ですが、自然界の営みを考えると、直に失敬は遠慮願いたいとしても、抜け毛ぐらいは提供してあげたい気持ちになります。
そんなことを考える、春の一日です。