久しぶりにオペラ「カルメン」を見ました。
今回は劇場で上演される生のオペラではなく、METライブビューイング(のアンコール上映)です。
METライブビューイングというのは、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されるオペラが収録・編集され、本公演の翌月には海外へ配信されて映画館などで上映されるというもので、日本にいながらニューヨークの公演をライブ感覚で楽しむことができます。
映像ならではの出演者の細かな表情や手の込んだ衣装、舞台装置などがよく見えるのも面白く、また、幕間に舞台の袖で行われる出演者や指揮者への臨場感あふれるインタビューや、舞台セットを入れ替える様子が収められているのも魅力のひとつです。
カルメンはスペインのセヴィリアを舞台に、自由奔放で魅惑的なジプシーの女"カルメン"と、彼女に魅せられ人生を翻弄される純朴な兵士ドン・ホセの悲しい運命が描かれたオペラです。ビゼーの作品ですが、前奏曲や間奏曲、アリアなど、音楽も大変美しく(有名な曲も多いので)、オペラに馴染みのない人にもお勧めです。
わたしはこの作品が大好きで、DVDも何枚か持っているのですが、一番のお気に入りはアグネス・バルツァとホセ・カレーラスが主演の、1987年のメトロポリタン歌劇場でのライブ収録盤です。
カレーラスは三大テノールのひとりとして有名ですが、バルツァはカルメン歌いとして近年最高のメゾ・ソプラノと言えるでしょう。
このふたり、声質といい演技といい、文句なしのはまり役で、特にバルツァはわたしがカルメンを見るときの基準となっています。
しかし、実際に劇場でオペラを見る際はその基準が高いハードルとなってしまい、見ている時は楽しいのですが、後になると、やっぱりバルツァに軍配……となってしまうのです。
ところが今回のエリーナ・ガランチャとロベルト・アラーニャは大正解。大変素晴らしかったです。
ガランチャのカルメンは若々しくて危険でチャーミング、アラーニャ演じるドン・ホセは、幕が進むほどにその純朴さが際立ち(つまりダメ男すぎてイライラさせられるんですね)、本当に魅力的でどんどん引き込まれる、見ごたえのあるふたりの演技でした。
久しぶりに新鮮な気持ちでカルメンを楽しむことができた大満足のMETライブビューイング。
11月から始まる新シーズンも気になる公演が多々あり、こちらもいまから楽しみです。
<おまけ>
エスカミーリョ役のテディ・タフ・ローズは、当初予定されていた歌手の代役ですが、なんと本番の3時間前に出演依頼されたそうです。
そんな話も幕間のインタビューで紹介されましたが、とても魅力的なエスカミーリョでした。
また、濃いキャラクター満載の登場人物の中で、唯一ホッとする存在のミカエラを演じるのはバルバラ・フリットリですが、いままで見てきた他の歌手が演じるミカエラとは印象が異なり、ちょっと貫禄さえ感じる役作りでした。
その理由もインタビューで語られていて、なるほどと思いました。
その他、カルメンのジプシー仲間のソプラノ、メゾ・ソプラノや、ホセの上官、コーラスなど、すべて素晴らしくて、さすがメトのオペラです!
ちなみにカルメンは、まわりの男を片っ端から魅了して、ドン・ホセの人生をも狂わせてしまうので、オペラの「三大悪女」なんて言われ方もしますが、それは自分の感情に素直に生きただけで、その時々嘘はなく、ただただ心の声に正直だったにすぎないのでしょう。
カルメンの有名なアリア「ハバネラ(恋は野の鳥)」で歌われているように、「あんたが好いてなくても、あたしに好かれたらご用心」なのですね。
バルツァ(左)とガランチャ(右)のハバネラがありましたので、ぜひ。
どちらも素晴らしいです。
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N (月曜日, 28 8月 2017 18:59)
エリーナ美しすぎる!大好きだ